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スイスでライブした話②〜GrooveSession 2022 in Switzerland

スイス2日目。時差も感じずに早朝に起床。そもそも日本で昼夜逆転の生活をしてる俺にとって7時間遅れの時差があるスイスは優しい国だ。更に驚いたのは街中に灰皿が設置はれてて、道行く人達はスパスパ煙草吸ってる。愛煙家の俺も若干引くぐらいの喫煙大国。それにつけても優しい国だ。気分良く会場へ向かう。

バスケコートの上に組まれた特設ステージで大会は行われる。時間通りに到着してが中々始まらず、本番で使うデータのチェックとウォームアップをしてたら軽く1時間は過ぎた。なんとまぁルーズな方々だ。暇を持て余し始めた頃、出場するダンサーが少しずつ会場入りしてきた。

これはチャンスだ。
全員居る前でショーケースみたいなサウンドチェックしてやる事に決めた。

「もうokだ。準備してくれ」
Arturにそう言われてからも俺はわざとゆっくり準備をしながら出場者が揃う時を待った。元々MPCのサウンドチェックに2時間ほど取ってくれてるからまだ余裕はある。
ドラムを一個一個鳴らしてもういつでも始められる状態からしばらく待っていると、まさに昨日散々俺を指差してゲラゲラ笑っていた連中が視界に入った。

もうやっちまうか。
これでも喰らえとばかりに「Dominate Break loop」をフルパワーで演奏してやった。

全員俺を見てる。軽く踊る奴。笑ってる奴。

だけど昨日とは違う、嘲笑じゃない笑いだ。

気付くとみんなブチ上がって踊ってた。

気付くと俺も笑ってた。
多分この時がスイスに居る中で一番楽しくて一番ブチかましてやった時間だった。

そして本番ではやりもしない曲まで演奏して30分ぐらいに渡る関係者各位への宣戦布告は終わった。

そもそも日本でライブする時も俺のマインドはいつだってこんなである。まずはリハで出演者達の心を掴む所から始める。本番では俺の事など知らない人も心底沸かさなきゃならない。とある先輩が「海外に行くと自分が何者でも無くなる」という話をしていたが、日本でだって俺はまだ何者でも無いと自分では思ってる。10年経って、俺を知ってるくれてる人が多少増えても変わらない宣戦布告スタイル。だからいつも通りっちゃいつも通り。

このリハにボスのArturも大満足。すげぇデカい声で俺には全く伝わらないフランス語で多分賞賛してくれてた。
そこからは認められたのか何か分からないが、ダンサー達の態度がガラっと変わってしっかりコミュニケーションが取れるようになった。俺の気持ちの問題もあったのだろうが、とにかくここを境に過ごしやすくなったのは間違いない。

こうして初日のGroove Session開幕準備は着々と進んでいった。

午前中にリハして本番は夜19:00から。
みんな忙しそうだしこっちもする事もないので、街へ出てみる。

もう大好き。こういう場所。バーガーキングが3000円、350mlのジュースが400円という異常に高い物価を除けば最高。


ベタな観光地を回ったり、恐らく地元の人からしたら何でもない場所の写真撮ったり、一杯1200円のコーヒーを飲んでみたり、たっぷりヌーシャテルを堪能した頃には陽が傾き始めていた。

会場に戻って出演者向けの食堂に入ると、リハを経て仲良くなった現地のDJ、Vientianeくん(同い年!)を発見してしばらく話をした。フリースタイルセッションは沢山やってきたが、ダンスバトルとなるとやった事がない。映像では観ていたが実際どういうタイミングでビートチェンジするのかとか、この国におけるダンスバトルDJのお約束みたいなのを聞き出したかった。彼は懇切丁寧に俺にも分かり易い英語で説明してくれた。主催のArturは「君の思う通りにやってくれ」としか言わないので、これにはマジで助けられた。

時刻は18:00過ぎ。ぼちぼちお客さんで埋まり始める。
俺は開幕でいきなり演奏する手筈だが、19:00からと言われただけで具体的にどういうタイミングで始めるか分からない。確認したいがArturは何処にも居ないし電話も繋がらない。

終始そうだったが、マジでしつこいぐらい全部確認しないと何も教えてくれてない。その割に「こうしてくれないと困る」みたいなノリでくる。「なんで聞かなかったスタイル」である。お陰でこっちはコミュニケーションの化け物になれた訳だが。

開始5分前、スタッフがMPCをステージのど真ん中に設置してくれた辺りでようやくArturをとっ捕まえて確認事項を翻訳アプリに書いて見せる。
すると「先に1分ぐらいの映像が流れて、その後合図するから僕を見てて。あと10分押しだからまだスタンバイしないでね」というそこそこ重要な初耳情報が二つぐらい出た
とにかく流れは把握したので待機。

開始2分前、会場が暗転したのを合図にMPCの前まで歩いてスタンバイ。
目の前には300人ぐらいのあらゆる国籍の人間達、背後には100人ぐらいだろうか。もっと居るのか。単純な人数でいったらこのぐらいの規模の現場はいくらでもあったが、受けるプレッシャーみたいなのは圧倒的に今の方がデカい。
DJ Vientianeがめっちゃ良い感じ選曲で会場をちょうどいい温度にしてる。
俺は早く音を鳴らしたい衝動が体を突き破って出てくるのを抑えるのに必死だった。

もうそろそろかというタイミングで合図を出す予定のArturの方に目をやる。

居ねえ!ついさっきそこに居たのに居ねえ!とっくに19:09になって数十秒は経ってるのに居ねえ!
まぁなんとなく映像(当然どんな物か知らないけど)終わったら始めれば…..

その映像が流れない。

Vientianeはもう音を止めている。

暗闇を無音が覆い尽くす。

これは…どんな感じだ!?

気付くといつの間にかArturがさっきの場所に戻ってて俺を見て頷いてる。無音は止まらない。

えっ?いいの?やっていいの?

俺は小さく「ok?」を示すハンドサインを投げかけた。

するとArturも同じように小さく「ok」とハンドサインを返した。

いいの?映像無し?

Arturもは大きく頷きながら満面の笑みで「ok」とハンドサインを出している。

全然OKじゃねえけどやるわ!!!

to be continued⇨

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